相続のトラブルは、何が問題なのかより先に「誰に相談すればいいのか分からない」で止まりやすいものです。預金の引き出しでもめているのか、不動産の名義変更が進まないのか、相続税がかかるのか不安なのかによって、適した相談先は変わります。ここを間違えると、相談したのに前へ進まない、別の専門家を案内されて二度手間になる、といったことも起こりがちです。相続では、早く動くことも大切ですが、最初に相談先を整理しておくことのほうが結果的にスムーズにつながります。まずは、弁護士、司法書士、税理士、それぞれの役割の違いを押さえておきましょう。
まず押さえたい、相談先の考え方
相続の相談先は、大きく分けると三つです。親族同士の争い、遺産分割の対立、使い込みの疑いなど、対立が表に出ているなら弁護士が中心になります。不動産の相続登記や名義変更、戸籍収集、必要書類の整理といった実務面なら司法書士が向いています。相続税の申告が必要か、税額はどの程度か、特例が使えるかといった税務の話は税理士の分野です。
この切り分けを最初に知っておくだけでも、相続の進み方はかなり変わります。相談先が合っていると、必要な書類や次の動きが見えやすくなり、家族間の不安も減りやすくなります。
親族間でもめているなら弁護士
弁護士に向いている相談
遺産分割の話し合いがまとまらない、一部の相続人が財産を隠している気がする、預金を勝手に引き出したと言われている、遺言書の内容に納得できないといったケースは、弁護士に相談するのが基本です。相続は身内の問題だからこそ感情がぶつかりやすく、本人同士では冷静に進めにくい場面が少なくありません。
早めに相談したほうがいい理由
争いが見えているのに、当事者だけで何とかしようとすると、言った言わないの対立が深まりやすくなります。話し合いがこじれる前に法律の専門家に入ってもらうことで、何が争点なのか、何を記録として残すべきかが整理しやすくなります。相続の対立は長引くほど家族関係にも影響しやすいため、早めの相談が有効です。
出典:日本弁護士連合会
不動産の名義変更や書類整理なら司法書士
司法書士に向いている相談
実家や土地の相続登記をどう進めるか分からない、戸籍をどこまで集めればよいか不安、遺産分割協議書などの書類を整えたい、といった場面では司法書士が頼りになります。相続では、争いがないのに手続きが進まないというケースも多く、その多くは書類整理の段階で止まっています。
相続登記を放置しないためにも相談先を決めておく
不動産を相続した場合、名義変更を先送りにすると、あとで相続人が増えて関係が複雑になり、手続きの負担が大きくなることがあります。必要書類の整理や申請の段取りを早めに見通せるだけでも、相続全体の負担はかなり軽くなります。争いがない相続ほど、司法書士への相談が実務上の近道になりやすいです。
出典:日本司法書士会連合会
相続税の不安や申告の話なら税理士
税理士に向いている相談
相続税がかかるのか知りたい、申告が必要か判断したい、財産の評価方法が分からない、申告期限までに何を準備すべきか確認したいといった場合は、税理士への相談が適しています。相続税は、財産の内容や特例の使い方で見通しが変わることがあり、自己判断だけでは不安が残りやすい分野です。
税務署の相談窓口も活用できる
一般的な税の相談は、国税庁の電話相談センターで案内されています。具体的な書類や事情を確認しながら相談したい場合は、税務署での面接相談もありますが、事前予約が必要です。税理士会による無料相談会が実施されることもあるため、まず概要を確認したい段階ではそうした窓口も選択肢になります。
どこに相談するか分からないなら法テラス
相続では、預金、不動産、遺言、税金が重なっていて、自分の悩みがどの分野なのか分からないことも珍しくありません。そうしたときの入口として使いやすいのが法テラスです。法テラスでは、法制度や相談窓口の案内を行っており、収入や資産が一定基準以下の人は、無料法律相談や弁護士・司法書士費用の立替え制度を利用できる場合があります。
最初から専門家を決め打ちできないなら、まず法テラスで状況を整理し、そのうえで適切な相談先につなぐ考え方でも十分です。相談先が分からないまま抱え込むより、入口を一つ持っておくほうが動きやすくなります。
出典:法テラス
迷ったときは、この分け方で考える
話し合いがこじれている
遺産分割でもめている、感情的な対立が強い、使い込みを疑っているなら弁護士です。
名義変更や書類の進め方が分からない
不動産の相続登記、必要書類の収集、手続きの流れを整理したいなら司法書士が向いています。
税金が不安
相続税の申告や税額の見通し、特例の確認なら税理士や税務署の相談窓口を活用します。
自分の悩みの整理から始めたい
どこに相談すべきか判断できないなら、法テラスを入口にする方法があります。
相続では、相談先を間違えないこと自体が大きな前進です。争いを抱えているのに手続きだけを進めても解決しにくく、税金の話なのに一般論だけで判断すると不安が残ります。何に困っているのかを一度言葉にして、それに合った専門家へつなぐことが、相続をこじらせないための第一歩です。



