電力会社株が投資テーマとして注目される背景

電力業界では、人口減少や省エネによる需要減少が意識されてきました。一方、近年はAI、データセンター、半導体工場などが新たな電力需要を生み出す要因として注目されています。

データセンターには大量の電力が必要になる

AIサービスを提供するには、多数のサーバーを稼働させて膨大なデータを処理する必要があります。サーバー自体の稼働だけでなく、発生した熱を冷却する設備にも電力が使われます。

電力広域的運営推進機関は、データセンターと半導体工場の新増設に伴う需要電力量について、2026年度に67億kWh、2030年度に308億kWh、2035年度に568億kWhを個別に計上しています※1。電力需要の増加が長期的な投資テーマとして意識される根拠の一つです。

半導体工場の新設も地域の需要に影響する

半導体工場では、製造装置、空調、純水設備などを継続的に動かします。大規模な工場が新設されれば、その地域を担当する電力会社や送配電事業者には、新たな電力供給や設備増強が求められます。

ただし、大型施設の立地は地域ごとに異なります。全国の電力需要が増えるとしても、すべての電力会社が同じ割合で恩恵を受けるわけではありません。供給区域内の工場計画やデータセンターの接続計画を確認することが重要です。

再生可能エネルギーや送電網への投資も続く

電力会社は、火力、原子力、水力、太陽光、風力などを組み合わせながら電力を供給しています。脱炭素化を進めるためには、再生可能エネルギーの導入だけでなく、送電網や蓄電池、需給調整に関する設備も必要です。

これらは将来の事業機会になる一方、先行して多額の設備投資が発生します。投資額が大きくても、すぐに同額の利益が生まれるわけではない点には注意が必要です。

電力会社株は必ずしも安定株ではない

電力会社は生活に必要なサービスを提供していますが、株価が安定しているとは限りません。業績を左右する要素が多く、経営環境が大きく変化することがあります。

燃料価格と円相場の影響を受ける

火力発電に使用するLNG、石炭、原油などの多くは海外から輸入されます。国際的な燃料価格が上昇した場合や円安が進んだ場合には、円換算した燃料費が膨らみやすくなります。

燃料価格の変化を電気料金に反映する燃料費調整制度がありますが、調達時期と料金への反映時期には差が生じます。料金メニューや規制の影響もあり、燃料費の増加分を常に速やかに回収できるとは限りません。

原子力発電所の状況が業績を左右する

原子力発電所を保有する電力会社では、再稼働の可否や時期が発電コストに影響します。再稼働が進めば火力燃料の使用を抑えられる可能性がありますが、安全対策工事や審査には時間と費用がかかります。

再稼働の予定が示されていても、計画どおりに進むとは限りません。株価に期待が織り込まれた後で計画が延期されれば、株価が下落する可能性もあります。

減配や無配になることがある

電力会社の配当は、利益、財務状況、設備投資、将来の資金需要などを踏まえて決められます。以前に配当実績がある企業でも、業績悪化によって配当を減らしたり、見送ったりすることがあります。

高い予想配当利回りが表示されていても、株価下落によって見かけ上の利回りが高くなっている場合があります。配当利回りだけで判断せず、会社が公表する配当方針と業績予想を確認する必要があります。